USAのヒミツ。USAくしゃ(作者)にきいてみた
ヒッコリーにはお馴染みの、愛されキャラクターがいます。
その名は「USA」
国名ではございませんよ。「USA」と書いて、「うさ」と読みます。
浮き星缶やTシャツ、ハンカチ、帽子など、ヒッコリーオリジナルグッズにはUSA柄のデザインがたくさんあります。お店やオンラインショップで見掛けたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ふたつみみにまあるいボディ、つぶらな瞳の、ウワサのあのこ。
一度そのかわいさを知ると、目が離せない、不思議なあのこ。
最近では、USAファンだというお客様からの声も徐々に増えてきました。
私たちを虜にする、ヒッコリーいち愛され上手なUSA。
一方で、いつからヒッコリーにいるのか、つぶらな瞳でどんなことを考えているのか、ミステリアスな部分も多いんです。
USAって一体、どんなキャラクターなんでしょう。
USAの謎を解き明かすべく、今回取材させていただいたのは、USAの生みの親であるヒッコリースタッフ・永井さん。
USAのヒミツやUSAグッズの制作秘話について教えていただきました。
独占インタビュー、USAファンの皆様、必見です。
ᙏ USAの進化論
USAの原型となるキャラクターが生まれたのは、永井さんが中学生の頃だったそう。こんなに可愛らしいUSAを描く永井さんですが、実は動物が苦手なんだとか。唯一好きな動物がうさぎだったことや、昔うさぎを飼っていたことがUSAを描くきっかけになっているかもしれない、と永井さんはいいます。
(永井)
「USA」っていう名前が初めてついたのはヒッコリーに入社してからなんですが、うさぎのキャラクター自体は私が中学生くらいの頃から描いてました。昔は本当にいろんな形のうさぎを描いていました。うさぎって、前歯で木をかじって削る習性があるんですけど、私が飼っていたうさぎは削るのが下手くそで前歯が伸びちゃってたんです。だからヒッコリーに入るまでは出っ歯なうさぎを描いてましたね。あとは、すごい美脚のうさぎを描いたり、顔があったり。今はそれら全てを失って丸っこくなっていますが…(笑)。
ーー今のシンプルなUSAからは想像出来ないですね。さまざまな変遷があって今のUSAにたどり着いたんだと思いますが、入社してから現在のUSAに変わっていく上で、何かターニングポイントのようなものがあったんですか?
(永井)
いちばん最初にUSAを描いたときに、Illustratorのパス機能*を使って描いていたんですが、その頃まだデジタルの操作に慣れていなくて。いかに楽に描こうか考えて、線を単純化していった結果、口や表情をなくしたシンプルなUSAにたどり着きました。
*ツールを使って図形やレイアウトの作成ができるグラフィックデザインソフト。
Illustratorを用いて書かれた線をパスと呼びます。
ーー表情がないのに、“このUSAたのしそうだな”とか“いまこのUSA焦ってるな”とかって伝わってくるのがおもしろいですよね。
(永井)
そうですね、それこそコロナになって「USAのまちがいさがし」シリーズを始めてから、かなりUSAの表情が出てきたんじゃないかなと思っていて。最初の頃は「USAって何考えてるの?」と聞かれることもあったんですが、少ないパーツでいかに伝えられるか結構試行錯誤はしてますね。
ーーまちがいさがしシリーズは一度にたくさんのUSAを描くから、描き分ける必要が出てきたりもしますよね。父の日がテーマだった第58回のまちがいさがしでは、眼鏡を掛けていたり、USAにヒゲがあったり、USAの新たな一面を知れた気がします。
2年前から永井さんがイラストを描いている「USAのまちがいさがし」
隔週火曜日に発行&お店で配布しています。
7つまちがいを見つけたら、ヒッコリーからささやかなプレゼントが。
ーー新作のTシャツも、モコモコしたサガラ刺繍がUSAのイラストにすごくぴったりでしたね。今まではUSAってお餅や白玉みたいに、つるっとした質感なのかな?と思っていたんですが、今回の刺繍でUSAに毛並みが出てきたことで、謎めいていたUSAの解像度がちょっと上がったように思いました。あ、USAってこんな可愛さもあるんだ、触るとモコモコしているのかも、って。
USAシリーズの新作Tシャツ「うしろもみてね」
イラスト部分にサガラ刺繍がほどこされて、USAのモコモコした毛並みが表現されています。
(永井)
私も商品を作りながら、「USAってもしかしたらこうなのかも?」っていろんな発見ができて。どんどん新しい商品を作っていくうちに、USAが出来上がっていく感じはありますね。
ーーなるほど。新作をつくるたび、USAも一緒に成長しているんですね。
(永井)
なかなか商品制作と一緒にキャラクターが成長していくことってあんまりないと思うので、こういう機会と発表の場をいただけるのは本当にありがたいです。
それこそ一番最初につくった頃のTシャツなんかは、今見ると、今よりもUSAの手足がちょっと長かったり。気がつかないうちに、どんどん丸っこくなっていって…(笑)。過去作を見ると、変化を感じられます。
ーー年々アップデートする、ちょっとずつ進化し続けるUSAにも注目ですね。
ᙏ 新作は「サガラ刺繍」ならぬ「“USAガラ”刺繍」に注目
永井さんがイラストからデザインまで手がけるUSAグッズは、刺繍やプリントによって、USAの可愛さがより一層引き立っているのも魅力の一つ。
商品制作の裏話についてお聞きしました。
「ししゅUSA」Tシャツ
ポケットからワッペン刺繍のUSAの耳が飛び出すデザイン
「USAmmer」Tシャツ
クリームソーダのアイスクリーム部分が発泡プリントで
プクッと立体に仕上がっています。
ーー胸ポケットからワッペン刺繍のUSAの耳がのぞく「ししゅUSA」Tシャツや、発泡プリントを使った「USAmmer」、サガラ刺繍のUSAがかわいい新作「うしろもみてね」Tシャツなど、永井さんのデザインされた商品は、いつも刺繍やプリントを上手くデザインに取り入れてる印象があります。制作の時は、どのようにイラストの雰囲気にぴったり合う刺繍・印刷技術を選んでいるのでしょうか?
(永井)
たとえば、新作のサガラ刺繍を使ったTシャツは、はじめはイラスト部分に発泡プリントのインクを使おうと考えていたんですが、迫さんにデザイン案を見せたら「刺繍にしてみたら?」と提案があって。提案を受けて、刺繍のTシャツは過去に作ったことがあったので、また違う刺繍技術でやってみたいなと思い、改めて田中刺繍さん*のウェブサイトをチェックしてみたんです。
*五泉市にある刺繍工場。
USAシリーズ含めヒッコリーの刺繍アイテムをほとんど刺繍していただいているのです。
さまざまな技法の刺繍を紹介しているページがあるんですが、見てみたら田中刺繍さんができる刺繍技術って本当にたくさんあって。刺繍ってこんなにいろんな種類があるんだって初めて知ったんです。USAに合う刺繍を色々試してみたくなって、今回はサガラ刺繍に挑戦してみました。
実際に工場見学にもいったんですが、すごく手間を掛けて丁寧な作業で刺繍してくださっていることがわかりました。
永井さんが工場見学に訪れた際に撮影した、サガラ刺繍制作の様子。
イラストの元データに合わせて、USAを立体化していきます!
かぎ針で糸をすくいあげて、わっか(パイル)状に刺繍していきます。
USAガラ刺繍はこうやって作られているんですね・・・!!
刺繍になったUSAたちが沢山できあがりました!
USAの数え方は1羽?1匹?1体? どれなんでしょう?
つぶらな瞳でこちらとじっと見つめています。
これがTシャツになって、お店に並ぶんですね。
ーー実際に田中刺繍さんの工場を見学してみて、永井さんが改めて感じた田中刺繍さんの強みや特徴はどんなところでしょうか?
(永井)
田中刺繍さんは刺繍の下請けの仕事もやっていらっしゃるんですが、実際に工場の中を見せていただいた時に、出来上がった商品のサンプルが置いてあって、田中刺繍さんがどの部分を作ったのかをご説明していただいたんです。下請けの仕事だと自社が担当した部分だけ出来ていればいい、という考え方も少なからずあると思うんですが、田中刺繍さんは“この商品は最終的にこの形になって、その為の刺繍をうちでしてるんだ”っていうのをどの商品に対しても一つ一つ丁寧に説明してくださって。ものづくりへの向き合い方が本当に丁寧だな、と。
ーー今後新たに田中刺繍さんの技術とコラボして作ってみたい商品はありますか?
(永井)
この間見たのだと、フェルトに刺繍してたのが可愛くて。サガラ刺繍とはまた違ったモコモコ具合なんですよ。あとはどんなのを作ったら可愛いかな…スパンコールのUSAとか、ギラギラしてて可愛いかもしれないですね。
ᙏ 良い意味でヒッコリー「らしくない」キャラ
10・20代の若い世代から、USAのまちがいさがしを毎週楽しみにしているおばあちゃんまで、非常に世代が幅広いUSAファン。お店でも「かわいい!」とUSAへのラブコールが増えてきています。最後に、作者の永井さんからUSAファンの方々へのコメントを頂戴しました。
ーー最近、USAファンだというお客様からの声が徐々に増えてきました。「かわいい」「誰が描いてるんですか?」とお客様から話しかけられることも多いです。USAの作者としてどうですか?
(永井)
恐縮です…(笑)。私が思っているよりも、自分の知らない場所や場面で、USAがたくさんの人の目に入っているんだなと実感して驚くのと同時に、有り難いです。
ーーヒッコリーの中でもUSAは特殊な立ち位置にいますね。
これまでを振り返っても、キャラクターものとして自立している商品は他にあまりなかったように思います。
(永井)
そうですね、良い意味でらしくないというのかな。やっぱり個人の発信力だけではキャラクターの知名度を上げたり、広げたりするのって今の時代運も込みで難しいと思うんです。今まであまりヒッコリーではキャラクターものは取り扱っていなかったのですが、年々お客様の反応を見て、「新しいの作ってみたら?」「やってみたら?」と言って自由にやらせてくださる迫さんには感謝しています。これからも大事に展開を広げていきたいと思います。そのうちUSAの商品を集めてUSAフェアやUSA展が出来たらかわいいですね。
終始謙虚で、はにかみながらインタビューに応えてくださった永井さん。
今後もより一層、USAシリーズから目が離せません!
取材・編集 堀川 真琴
取材協力 永井 李奈